早朝、用事があり家から徒歩13分程の最寄り駅まで行く。
私はシャブをやっていて、3日間寝ていなかった。最後に血管に流しこんでから15時間以上経っていたので用事を済ませたらさっさと帰ろうと思っていた。
用事は駅でチケットを買うことで、2分ですんだ。
ほっとして元来た道を行こうとする。帰りは登り坂なので少しおっくうだ。人の少ない街は灰色に曇っていて静かで、シーンとしていた。雪が振ってもおかしくないな、と思った。
その時だった。右目の端にキラキラしたさまざまな光彩が廻っている。訳がわからず左右に目を動かして辺りを見るが、右目の端にそれはついてくるばかりである。
それどころかあっという間に広がって今は視界の半分ほどをギアのようなギザギザしたもの、あるいはねじれてつながるメビウスの輪のように変化しながら動く虹の色を持ったものが覆ってしまっていた。
「私はシャブのやりすぎでとうとう脳がいかれてしまったのだろうか?」
家前の道のりはなんとかなったがあまりにも不快で眠れそうにない。頭がズキズキしてきた。
家についてすぐにパソコンに思いつくままのワードを打ち込む。あいかわらずぎるぎると右側がうっとうしい。
検索の結果それが閃輝暗点というものだとわかった。少し安心した。脳の病気ではなかった。ついでにそれが芥川龍之介を苦しめ「歯車」と呼び文章にしたためていることもわかった。
芥川とは遠い頭の出来で…と割とわけのわからないことを考えながらありったけの睡眠薬を飲んでなんとか眠りについた。
閃輝暗点もちなので嘘を入れたけど文章に残してみたかった。